糸魚川の大地の歴史と化石
ヒスイから焼山まで 5億年の時代差
化石と地層の時代
化石とは、生き物そのものや生き物の生活の痕跡(巣穴や足跡など)が地層中に保存されたものです。
化石は、その化石が含まれる地層ができた時代や環境(どんなところでできたのか)を知る手がかりになります。糸魚川には、化石を含む地層として、「青海石灰岩」、「土倉沢石灰岩」、「来馬層群」、「手取層群」などがあります。
青海石灰岩
石灰岩は、セメントや有機合成の原料として利用されている資源です。糸魚川市の黒姫山や明星山をつくる石灰岩は青海石灰岩と呼ばれ、サンゴ、ウミユリ、コケムシ、腕足類、巻貝、二枚貝、ゴニアタイト(アンモナイトのなかま)、三葉虫などの化石が見つかります。これらの化石の種類から、青海石灰岩は今からおよそ3億年前のサンゴ礁にすんでいた生き物がもとになってできたことがわかっています。
糸魚川の青海石灰岩、岡山県の阿哲石灰岩、広島県の帝釈石灰岩、山口県秋吉台の秋吉石灰岩、福岡県平尾台の石灰岩とそれぞれの周辺の地層を合わせて「秋吉帯」と呼んでいます。これらの石灰岩は、南の海から海洋プレートの移動によって運ばれてきたものであることがわかっています。
土倉沢石灰岩
糸魚川市小滝の小滝川支流土倉沢に、大きな黒い石灰岩があります。この石灰岩から、サンゴ、ウミユリなどのほか、軟骨魚類のペタロドゥス、コクリオドゥス類、甲殻類サイクラスの化石が見つかっています。
この石灰岩が黒いのは、有機物が混ざっているためで、この石灰岩が大陸に近い場所でできたものであることを物語っています。見つかった化石の種類から、今から3億3千万年前(前期石炭紀)にできたことがわかっています。
来馬層群
糸魚川市の市振、上路、橋立、小滝、大所から、南の長野県、西の富山県にかけて、砂岩、泥岩、礫岩、凝灰岩などからなる地層がみられます。この地層から、シダやソテツなどの植物、二枚貝、巻貝のほか、魚の鱗、首長竜の歯、サメの歯などの化石が見つかっており、今からおよそ2億年前(中生代ジュラ紀)に浅い海~川でできたことがわかっています。この時代にはまだ日本列島は存在せず、将来日本列島になる地層や岩石は、大陸の一部でした。
この地層は、最初に研究された長野県小谷村の地名から来馬層群と呼ばれ、小谷村の来馬層群から恐竜の足跡の化石(小型の肉食恐竜のもの)が見つかっています。もし来馬層群から恐竜化石が見つかれば、日本最古の恐竜化石となります。
手取層群
糸魚川市の市振・上路、小滝、富山県朝日町、礫岩や砂岩、泥岩からなる地層がみられます。
これは、北陸(福井県・石川県・岐阜県・富山県)に分布する手取層群に相当する地層の東の端にあたります。
新潟県内のこれらの地層はこれまであまり化石が見つかりませんでしたが、2010年に開始されたフォッサマグナミュージアムと新潟大学の合同調査により、糸魚川市内の手取層群から初となる二枚貝化石や巻貝化石、保存状態がよい植物化石が発見されました。